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vol.282細菌が破裂して 社会性を発揮する仕組みを発見-2016/4/26

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台所やお風呂のぬめぬめ。これは、細菌がスクラムを組んで集合体を作っているバイオフィルムです。1つ1つの細菌たちが、情報をやりとりし、集合体を形成している状態。自然環境中ではほとんどの細菌がバイオフィルム状態で生息するといわれており、細菌の生存戦略の1つです。たとえば、感染症を引き起こす細菌がバイオフィルムを形成すると、抗生物質のききめが悪くなり、その結果、感染症の慢性化を引き起こしたりします。また、排水処理で利用される活性汚泥や口の中に形成されるプラークも、バイオフィルムです。

細菌がバイオフィルムを形成するためには、細菌どうしの相互作用が欠かせません。その役割を担っているのが、細菌が細胞外放出したDNAや、30-400nm程度の膜小胞です。しかしこれまで、細胞外DNAや膜小胞がどのようにして放出されるのかはわからず、長い間研究者を悩ませてきました。しかし今回、筑波大学の豊福雅典助教(チューリッヒ大学客員研究員兼任)、野村暢彦教授らの研究グループが、緑膿菌を使った研究で、細菌の集団中の一部の細胞が破裂することで、細胞外DNAや膜小胞を提供することが明らかになりました。超解像顕微鏡を用いた動画撮影では、細胞壁を分解された細胞が形を保てなくなって破裂する様子が観察されました。破裂した細胞の膜は、断片化したのち再構成されて膜小胞を形成し、その際に放出されたDNAの一部を取り込みます。さらに、細胞の破裂は、ストレスによって強く誘導されたため、ストレス応答遺伝子群を調べた結果、ファージ(細菌に感染するウイルス)の放出に関わる遺伝子が同定されました。この遺伝子は、細菌の細胞壁を分解する酵素をコードしていて、遺伝子欠損株を用いた実験などから、この酵素は、細胞の破裂を誘導するのに必須であることが明らかとなりました。

1つの細菌が破裂することで、周りにいる細菌がその恩恵にあずかるという不思議な現象。いわゆる「プログラムされた細菌の死」はいま、その存在が提唱され始めたばかりで、まだ謎が多く残されています。細菌たちの音なき声をきく研究は、これからも続いていきます。

詳細・参考 筑波大学プレスリリース(2016.4.14)
細菌が破裂する様子を撮影した動画必見!→http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p201604141800.html
PDFバージョンはこちら→http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/20160414toyofuku1.pdf

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