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課題研究の相談窓口通信(2016年4月28日号)「生き物の力と人間のものづくりを「くっつけた」新しい粘着技術」

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私達は日々進化する様々な技術に囲まれて暮らしています。その中でも、最近、生物や植物がもつ特徴的な構造や仕組みをものづくりに生かす「生物規範工学」に注目が集まっています。

大阪工業大学の藤井先生はヒトが生み出した「粘着剤」に「アブラムシ」から得た知見を加えた、新しい技術開発に挑戦しています。

粘着性は諸刃の剣
粘着剤は、身近なところではセロハンテープのベタベタしている面に薄く塗られており、その正体は高粘度な高分子化合物の液体です。「くっつく力」は、テープと接地面の間に粘着剤が濡れ広がることで発生します。また、時間がたっても液体のままなので、固体に変化する「接着剤」と異なり、剥がしてまた貼れるという特徴をもちます。非常に便利な材料ですが、高粘度の液体であるがゆえ、フィルムに塗ってテープとして使ったり、またスプレーとして使うなどしか方法がなく、扱いに不便さがあったり、細かい隙間に使いにくかったりという課題がありました。そこで、藤井先生が創りだしているのは、これらの課題を解決する新しい粘着剤です。

指先で感じた新技術
「アブラムシとの出会いが研究のきっかけ」と藤井先生は語ります。アブラムシはおしりから「甘露」という蜜を出すことが知られていますが、巣の中で甘露が溜まり、カビが発生してしまう問題もあります。そのため、蜜の表面を自身の体から出す固体のワックス粒子で覆うことで、ベタつきのない団子状に変える仕組みをもっています。「このような団子状の物質をつくる事は知っていましたが、実物を見た事はありませんでした」と先生は過去を振り返ります。しかし研究のために訪れた北海道で、本物を見る機会を得ました。「共同研究先のアブラムシを研究されている先生に味見を勧められ口に含みました。その時に”甘い”という感覚以外に指先に残る粘つきを感じました。研究室で粘着剤を研究していた事もあって、組み合わせたら新しい粘着剤がつくれるのでは?と閃いたのです」と先生は語ります。

世界初!粒状の粘着剤の完成
水分が粉で包まれた団子状の構造物は「リキッドマーブル」と呼ばれています。この構造は、小麦粉のような粉では水が粉粒の間に入り、混ざってしまうため作る事ができません。そこで先生は、過去に開発した水を弾く性質をもつ疎水性の粉末を利用しました。粘着剤の分子が水に分散した「ラテックス」を、疎水化した粉末の上に滴下し、少し転がしたところ、リキッドマーブルができました。ラテックス中の水分を蒸発させたところ、最終的にミリメートルサイズの粒状の粘着剤を作ることに成功しました。粘着剤なのにベタベタせず、指で押しつぶしたり、ものの間に挟み練ることで初めて粘着性を発揮します。また粘着剤自体に厚みがあるので、細かな建築物の隙間や木などの凸凹した面の接着に利用できることがその後の研究で分かっています。「他にも疎水化した鉄粉を使うことで、磁石で粘着剤を引っ張り目的の箇所に設置することもできます。もっと自由な発想で用途を考えたいですね」と先生は笑顔で話します。
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開発した粒状の粘着剤

本物に触れることから研究は始まる
「身の回りに情報があふれる現代ですが、実際に触れて、感じることで気がつくこと、不思議に思うことがあります。研究の種はそのようなところに隠れているのではないでしょうか」と先生は話します。普段感じた感動や、気になった現象を大事に心に残し、ふとしたきっかけでそれらを組み合わせる。その繰り返しが新しい研究テーマをうむのかもしれません。まずは興味のあるテーマを見つける事が重要と語る先生は、今日もワクワクに包まれながら研究を進めています。

<取材した先生>

大阪工業大学工学部応用化学科
高分子材料化学領域 微粒子材料研究室
藤井 秀司 准教授
大阪府立豊中高等学校卒業、神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了ののち、同大学で学術研究員、Sussex大学(英)博士研究員、Sheffied大学(英)博士研究員の後、大阪工業大学講師を務め、2013年より現職に至る。

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先生の右手に御注目。新規開発した粘着剤に圧力をかけ、伸ばした様子。

 

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