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2010.04.07 サイエンスブリッジニュース

SBN001_においを封じ込める小さなカプセルのおはなし

食べ物や汗など、一日外にいると服にたくさんの匂いがつきますよね。近年、ふきかけるだけで簡単にイヤな匂いをとる消臭剤を多く見かけます。こうした消臭剤はどうやって匂いをとっているのでしょうか。

 

そのヒミツは「シクロデキストリン」という物質にありました。シクロとは「環状」を意味し、デキストリンは「オリゴ糖」を指します。グルコース(ブドウ 糖)がいくつか連なってできたオリゴ糖の両端がつながって、浮き輪状のかたちをしているのがシクロデキストリン。

 

大きさもナノサイズで、“世界で一番小さなカプセル”と称されるこの物質はどんな役目をしているのでしょうか。

 

シクロデキストリンは、この浮き輪内にさまざまな分子を出し入れする性質を持っています。浮き輪の内側は疎水性(油になじみやすい)、外側は親水性(水に溶けやすい)と いう相反する2つの性質を持っているため、変化に富む作用を発揮するのです。
消臭剤では、あらかじめシクロデキストリンにいい香りを入れてあり、噴出されると、湿気を感知していい香りを徐々に放出していきます。そして、空いたシクロデキストリンには、くさい匂いがどんどん入っていくことで、消臭をしているのです。 湿気(水)というのが、スイッチになっているんですね。そのため、洗濯物が臭うのを抑えるためには、生乾きのうちにスプレーするのがよいかもしれません。

 

ちなみに、チューブワサビの辛味・香味成分もシクロデキストリンが活躍しています。ツーンとくるあの成分は、放っておくとどんどん空気中に逃げてしまいます。生ワサビがおろしたてでないとダメな理由はこれ。シクロデキストリンに入れておけば、少しずつ放出してくれるため、風味を活かした保存ができるようになるのです。

 

(取材協力:東京工芸大学 工学部 生命環境化学科・ナノ科学研究センター 高橋圭子先生)