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2010.04.27 サイエンスブリッジニュース

SBN003_鉄より強いプラスチック誕生

プラスチックでできた精巧な車や電車のプラモデルは、大人にも子どもにも人気です。しかし最近開発されたしたプラスチックを使えば、プラモデルだけでなく人が乗れるくらい大きな乗り物が作れるかもしれません。

4月19日、広島大学の彦坂正道特任教授らは、鉄鋼を超える比強度(引張り破壊強度を比重で割った値)を持つポリプロピレンの開発に成功したという発表をしました。この素材は、鉄鋼の2~5倍の比強度(重量当たりの引張破断強度)をもち、通常のプラスチックとほぼ同じコストで作れ、通常のプラスチックより50度以上高い耐熱性、さらに不純物が少ないため廃材が再生可能など、様々なすぐれた特性を持っています。また、プラスチック本来の「折り曲げても元に戻る、さびない、成形しやすい」などの特性も備えています。

これまで、ポリプロピレンなどプラスチックは、金属に比べると強度や耐熱性が劣っているため、使用できるシーンが限られていました。その原因は、プラスチック中の結晶にならない部分の割合の高さにあります。たとえば固い物質の代表であるダイヤモンドは、炭素原子が規則正しく並んだ結晶構造でできていますが、一般的なプラスチックにはこういった構造がないのです。

今回、彦坂教授らは、ひも状の高分子ポリプロピレンの液体を、融点以下の150度で瞬間的に圧縮するという特殊な方法により、分子のひもが引き延ばされて整列し、ポリプロピレンの結晶化度を高めることに成功しました。これにより、無数の小さな結晶がきちんと並び、これをダイヤモンドと同等の強度を持つひも状分子がしっかりと連結している構造が生まれたと考えられています。

いつか、車体も窓も全部プラスチックでできた車や、軽くてしなやかな高層ビルが誕生するかもしれませんね。

 

広島大学HPより http://www.hiroshima-u.ac.jp/top/koho/news_info/p_epvdxb.html