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2010.05.10 サイエンスブリッジニュース

SBN005_流し台で進路を決断してみる。

GWが過ぎ初夏の季節がめぐってきました。暖くなると心配なのが食中毒ですね。給食や弁当を食べる前には手を洗って雑菌を取り除きますが、実は洗い流されていたのは雑菌だけではないようなのです。

アメリカのミシガン大学の博士課程で心理学を専攻する大学院生スパイク・W・S・リー氏が、2010年5月7日発行の『Science』誌に発表した研究によると、手洗いには難しい決断をした後に頭に残る葛藤を「ぬぐい去る」効果があるといいます。

人間は難しい選択を強いられた後、自らの決断を正当化して安心しようとする傾向があります。ところがこの研究の実験では、難しい選択を行った後に手を洗った被験者のグループは、自らの選択を無意識のうちに正当化する必要性を感じなくなったというのです。

手洗いの効果を試すため、リー氏らはボランティアの学生を対象に、本当の実験目的を明かさず、消費者の意識調査 という名目で実験を行いました。40人の学生からなるグループに10枚の音楽CDを自分の好きな順番に並べてもらい、謝礼として5位か6位のCDのいずれかを選んで持ち帰ってもらうと告げました。CDを好きな順番に並べた後で、一部の学生には液体ハンドソープの評価との名目で手を洗ってもらい、それ以外の学生には液体ハンドソープのボトルを見る だけで評価してもらいました。その後でもう一度CDを好きな順番に並べてもらったところ、手を洗わなかった学生は自分が持ち帰るCDを前回よりも高いランクに置き、手を洗った学生は10枚のCDを前回とほぼ同じ順番に並べました。手を洗わなかった学生は、無意識のうちに自分の選択を正当化しようとして、選んだCDを高く評価したのだと考えられます。

自分の進路選択に迷った時は、まずは流し台に行って、手を洗って心を落ちつけてみましょう。

ナショナルジオグラフィック日本語版よりhttp://nng.nikkeibp.co.jp/nng/index.shtml