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2010.05.25 サイエンスブリッジニュース

SBN007_人工のDNAでも生き物は増殖できる。

遺伝子組み換え技術が生まれて約40年、ついに世界で初めて、人工的に作ったDNAで増殖する人工細菌が誕生しました。

細菌の全DNA配列(ゲノム)を人工的に合成し、別の細菌に移植したところ、移植を受けた細菌は人工ゲノムによって増殖したと、J・クレイグ・ベンター研究所(米メリーランド州)が2010年5月20日付の米科学誌『サイエンス』に発表しました。

研究ではまず、牛の感染症を起こす細菌「マイコプラズマ・ミコイデス」のDNA配列を調べ、この情報に基づき、「ミコイデス」のゲノムの断片を化学合成しました。次に、この断片を大腸菌などに導入して遺伝子組み換えでつなぎ合わせて人工ゲノムを作りました。完成した人工ゲノムを、よく似た細菌「マイコプラズマ・カプリコルム」からDNAを除いた「入れ物」に移植したところ、「カプリコルム」が人工ゲノムの作用で、
「ミコイデス」のタンパク質を作るようになったということです。研究チームは今後、この方法を用いて、あらゆる生命体を動かしている基本的な仕組みをさらに深く理解し、燃料の製造や有毒廃棄物の分解といった特殊な機能を備えた細菌を人工的に作りたいとコメントしています。

 

今回人工的に作られたのはDNAのみで、細胞膜やその他の細胞小器官は「カプリコルム」のもの。完全な人工の細菌が作られるにはまだ時間がかかりそうですが、「合成生物学」の分野の新たな一歩となるでしょう。

YOMIURI ONLINEより http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100521-OYT1T00059.htm

サイエンスの要約(英語)が読めます。 http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/science.1190719