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2010.10.06 サイエンスブリッジニュース

SBN026_ノーベル 物理学賞 発表!

今年のノーベル物理学賞をとったグラフェンという物質と鉛筆には深いかかわりがあります。グラフェンは、鉛筆の芯でおなじみの黒鉛(グラファイト)が何重に重なったものです。このグラフェンを精製する手法に対して賞が贈られました。

こんなに身近にある物質ですが、何百もの層が重なる黒鉛から1枚の層のグラフェンを精製することは難しいことでした。グラフェンを精製しようとし、各層の間に小さな分子を入れて剥がす方法や、摩擦で剥がす方法など様々な研究が行われてきました。そして遂に2004年アンドレ・ガイム博士とコンスタンチン・ノボセロフ博士が意外な方法で、原子1個分の厚さのグラフェンの精製に成功しました。その方法とは、砕いたグラファイトからセロハンテープでグラフェンを剥がし続けるというもの。テープを使って少しずつ剥がして原子1個分の厚さまで辿り着くのです。
では、グラフェンはどんなところで役立つのでしょうか?物質の中では電子が飛び回っていて、この電子の動きが物の性質を決めます。かたまりの状態に比べてシート状の物質では電子の動きが周りの影響を受けやすくなります。そのためグラフェンは、わずかな変化に敏感な、手を加えやすい物質になります。またグラファイトとも異なる性質をもちます。例えば、グラフェンが半導体などの電子デバイスとして実用化された場合、電子の移動速度が現在の半導体に比べ10倍速くなります。半導体の善し悪しは、電子の輸送速度で決まるため、グラフェンが電子デバイスとして実用化されると、性能が格段に良くなるといわれています。
このように、グラフェンはこれまでの物質とは異なる性質をもち、その応用や実験のしやすさから、21世紀の科学技術に大きなインパクトを与える素材なのです。このことが、発見された2004年からわずか6年という早い段階でのノーベル賞受賞につながりました。

<参考文献>①Press Release http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2010/press.html

②Popular Information http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2010/info.html

③Electric field effect in atomically thin carbon films SCIENCE 306   (666) 2004

④Carbon Wonderland(SCIENTIFIC AMERICAN April 2008)http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=carbon-wonderland