SBN028_もっとも人を愉快にさせた研究に!
先週は日本人のノーベル賞受賞に日本中がわきましたが、その1週間前、もうひとつのノーベル賞「イグ・ノーベル賞」も日本人が受賞しました。「イグ・ノーベル賞」とは「イグノーブル(Ignoble。品がない、あさましいの意)」と「ノーベル(nobel)賞」を合わせた言葉で、人をまず笑わせ、そして考えさせる研究、絶対に真似できない業績に与えられます。第20回授賞式が9月30日、米マサチューセッツ州ハーバード大学で開かれ、公立はこだて未来大学の中垣俊之教授らのグループ(9名)が粘菌の研究で「交通輸送計画賞」を共同受賞しました。中垣教授は2008年にも受賞しており、今回は2度目の受賞です。
2010年1月に『Science』に発表した論文において、粘菌の「交通網の設計能力」を解き明かしたことが、今回の受賞理由です。粘菌は比較的身近な場所におり、屋外の湿り気のある場所でよく見られます。増殖する時は菌類のような胞子をつくる一方、環境状態が良いときには変形体になって活発に運動を始めるという変わった性質をもっています。粘菌の一種、モジホコリの変形体は、真っ黄色で大きさが50センチを超えることもあり、見つけた人を驚かせることも。あちこちに小さい餌場所を点在させた寒天培地の上で粘菌を育てると、粘菌は大きく広がって、たくさんの餌を効率よく結ぶ管状の輸送ネットワークを作りだしました。この結果を踏まえて中垣教授らは、東京都近郊の地図の上で各都市にあたる場所に餌をおき、そこで粘菌を培養しました。すると粘菌がつくりだした管ネットワークは、まるで東京の交通網にそっくりだったということです。
いつかは粘菌が私たちの交通網を設計してくれるかもしれません。未来の設計事務所では粘菌が大切に飼われているかもしれないですね。
独立行政法人科学技術振興機構プレスリリース: http://bit.ly/bRlxIj(粘菌が作った交通網が見れます!)
公立はこだて未来大学HP:
http://www.fun.ac.jp/staff/staff_comp/nakagakitoshiyuki.html
受賞論文:A. Tero, S. Takagi, T. Saigusa, K. Ito, D. P. Bebber, M. D. Fricker, K. Yumiki, R. Kobayashi and T. Nakagaki : “Rules for biologically-inspired adaptive network design”, Science, 327 : 439-442 (2010)