SBN029_細胞内の配達屋さんも歩いてた!?
今日みなさんが着ている服は、どこで買いましたか?今日食べたご飯や、座っているイス、机はどうでしょう。たいていは、どこか遠くの工場や畑で作られて、トラックなどで運ばれてやっとみなさんの手元に届くものです。このように、「物質の輸送」は私たちの生活にとって欠かせない役割ですが、細胞の中でも同様に、
体の部品や栄養を輸送するタンパク質があります。その名も『ミオシンV』。大きさは50nm(ナノメートル、1mの1,000,000,000分の1)程度で、その小ささゆえにこれまで、静止画の撮影には成功していましたが、動いている様子を観察した人は1人もいませんでした。しかし2010年10月10日、金沢大学理工研究域数物化学系の安藤敏夫教授と古寺哲幸助教らの研究グループがついにそれに成功しました。
今回使用された顕微鏡は『高速AFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)』です。AFMは、上下に動くやわらかいレバーの先についた細い針先で試料に触れ、高さを計測することで試料の形を観察する顕微鏡です。今回は、針を高速で動かすことに成功し、140ミリ秒ごとに動きを観察できました。これまでの静止画からは、しゃくとり虫のようにアクチンのレールの上に接触したままずり動いていると考えられていましたが、そうでなく足が交互に離れて回転しながら動いていることがわかりました(下の模式図)。
この顕微鏡を使えば、ナノなサイズで回ったり、踊ったりしている面白い物質が見つかるかもしれませんね。
動くタンパク質の動画はこちら!http://bit.ly/91nVxn
JSTプレスリリース http://bit.ly/byCeUq
論文: Kodera et. all. “Video imaging of walking myosin V by high-speed atomic force microscopy” Nature 10 October 2010,