2010.11.17
サイエンスブリッジニュース
SBN033_とれてた!良かった!世界初!
今年の6月、奇跡的に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」(vol.10で紹介)のカプセルから、小惑星イトカワの微粒子が約1500個が見つかったと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が16日に発表しました。月より遠い天体の表面から試料を持ち帰ることに成功したのは人類史上初の快挙です。
はやぶさのサンプル採取は簡単にはいかず、イトカワの岩石を採取する際、装置の故障により目に見える大きさの岩石は採取できませんでした。しかし研究者らはあきらめず、微粒子なら偶然カプセルに入った可能性があるとみて、特別なヘラを使って慎重にカプセルの中をかき出しました。そしてヘラを走査型電子顕微鏡を用いて調べました。走査型電子顕微鏡とは、電子線で物質の表面を走査(スキャン)し跳ね返ってくる電子線を検出して、表面の微小な凸凹を観察する顕微鏡です。これにより、ヘラについたカンラン石などの微粒子を観察することに成功しました。さらに、物質に電子線を当てると含まれている元素によって決まった波長のX線が出てくるという性質を利用し、微粒子の中の元素の割合を調べたところ鉄の含有量が地球の岩石よりかなり高いことが分かりました。この組成は、イトカワの周囲からイトカワの岩石の元素組成を観測したデータともよく合致しました。これらの結果から微粒子はイトカワの岩石だと結論づけられました。
イトカワの粒子は太陽系が誕生した約46億年前の状態を今も保ち続けており、微粒子をさらに調べることで、太陽系の成り立ちが解明できるかもしれません。こんな小さな粒子に大きな解明の鍵が隠されているのですね。
参考・写真 JAXAプレスリリース http://www.jaxa.jp/press/2010/11/20101116_hayabusa_j.html