新着情報

2010.12.07 サイエンスブリッジニュース

SBN036_それでも、宇宙人はいると思う。

11月29日(現地時間)NASAは突如として「地球外生命体に関する会見を12/2に開く」と発表しました。この発表をうけ「ついに宇宙人の発見か?!」と世界中で憶測が飛び交いました。ところが実際開かれた会見の内容は、地球外生命体発見ではなく猛毒のヒ素を利用する微生物が地球上で見つかったという内容で、宇宙人を期待していた人からするとちょっとがっかりの内容だったかもしれません。しかし今回の発見は、これまでの生物界の常識をくつがえす驚くべき結果だったのです。

研究チームは、アメリカカリフォルニア州のモノ湖の塩濃度・ヒ素濃度の高い泥から微生物を採取しました。それをヒ素を含む培地で生育したところ、ヒ素を毒とし排除するのではなく、ヒ素が遺伝子情報(いわゆる他の生き物でいうDNA)に組み込まれていることが発見されました。これまで、基本的に5つの元素(水素H、炭素C、窒素N、酸素O、リンP)からなる生物の遺伝子情報に例外はなく、その普遍性こそが生物のもつ遺伝情報の大きな特徴でした。しかし今回この事実が覆ったのです。また、取り込まれているヒ素は酸化数が+3(As(III))ではなく+5(As(V))であることからヒ素はリン酸と同じ結合様式でDNAへ組込まれていると考えられます。リンとヒ素は、元素周期表では上下に位置する同族元素なので化学的性質が似ており、原子半径や電気陰性度もほぼ同じです。周囲にヒ素が多くリンが少ない時、ヒ素を積極的に取り込むことで生存するという独自の変化を遂げた生物である可能性があります。

この発見により、生命はより過酷な場所でも存在できることがわかり、地球以外の星に生命が存在する可能性が高まったとのこと。地球外生命体の発見ではありませんでしたが、その存在を信じて探し続ける研究者がいるかぎり、いつか見つかるのではないでしょうか。

参考)A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus. Science. Dec. 2, 2010