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2010.12.10 サイエンスブリッジニュース

SBN037_もし、3億円当ったら どうしよう…!?

2010年ももうすぐ終わりですね。年末恒例の宝くじの「億万長者が去年の倍の444人!」という触れ込みに、思わず買ってみた人もいるのではないでしょうか。「もし3億円当たったらと想像するだけで夢が広がってワクワクしますね。実は人間には、まず当たらない低い当選確率でも高く見積もってワクワクできる傾向があることが知られてきました。2010年12月8日に日本とアメリカの共同研究チームが北米神経科学会誌『The Journal of Neuroscience』オンライン版に発表したところによると、情動的にワクワクハラハラする傾向が強い人には、脳内にある特徴がみられることが明らかになりました。

私達の脳では、常に神経細胞から「神経伝達物質」が分泌され、神経細胞の間でやりとりされることで、意思決定や運動などあらゆる活動が可能になります。神経伝達物質にはノルアドレナリンやアセチルコリン、ドーパミンなどがあります。また脳には報酬系という快楽を司る部分があり、その一つである「線条体」にはドーパミンを受け取る受容体があります。研究者たちは、線条体にあるこの受容体と、低確率を高めに見積もり高確率は低く見積もる度合いとの関係を調べたところ、D1という受容体の密度が低い人ほど、低確率を高めに見積もり高確率を低く見積もる度合いが強いということがわかりました。つまり、D1受容体の密度が低い人は、より情動的な意思決定をしワクワクハラハラしやすく、高い人は冷静な意思決定をしやすい傾向があるのです。

この研究成果は今後、医学の分野でギャンブルなどの依存症、精神・神経疾患の治療に役立つ情報の1つとして期待されています。宝くじでワクワクする気持ちだけでなく、私達の複雑な感情は、すべて神経伝達物質の動きで説明できてしまう日がくるのでしょうか。なんだか不思議な気持ちがしますね。

参考:独立行政法人放射線医学総合研究所プレスリリース http://www.nirs.go.jp/news/press/2010/12_08.shtml