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2010.12.21 サイエンスブリッジニュース

SBN038_海に沈むタイタニックの新しい乗客

有名なハリウッド俳優が主演した映画『タイタニック』でもおなじみの、豪華客船タイタニック。1912年4月15日に大西洋の海底3,650mに沈没しました。沈没からもうすぐ100年になります。

2010年12月8日、カナダの研究チームにより、深海に沈むタイタニックから鉄を腐食する新種の細菌が発見されたことが「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology」誌に報告されました。現在のタイタニックの船体は、金属製の手すりや船体につらら状の鉄さびがたくさん垂れ下がっています。このつららは「ラスティクル(rusticle)」と呼ばれ、スポンジのように穴がたくさん開いた構造をしています。今回の調査で、このラスティクルの中にいた細菌の1種が、好塩性細菌ハロモナスの仲間であり、遺伝子の解析をした結果これまで発見されていなかった新種であることがわかったのです。好塩性細菌は生きていくために塩化ナトリウム(NaCl)が必要な生物で、海水や塩田、みそなどに生息しています。今回見つかったハロモナスは、代謝により酸を作ることができ、これにより金属を腐食させていると考えられます。この細菌はタイタニックにちなんでハロモナス・ティタニカエ(Haromonas titanicaeと名付けられました。

別のハロモナスの仲間では、重金属の浄化を行うという研究が行われています。ハロモナス・ティタニカエによるタイタニックの崩壊の過程を研究することで、海に建てられる石油掘削施設や船の保護方法の開発にも応用できる可能性があります。自然の中で崩壊していく船体を見守りながら、新種の細菌の研究は進んでいくでしょう。海の底のタイタニックには、まだまだ私たちの知らない新しい乗客が隠れているのかもしれません。

参考  Halomonas titanicae sp. nov., a halophilic bacterium isolated from the RMS Titanic

Cristina Sa´ nchez-Porro, Bhavleen Kaur, Henrietta Mann and Antonio Ventosa1

International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2010), 60, 2768–2774