「設計力」を身につけて、空へ飛び出そう【帝京大学 理工学部 航空宇宙工学科 学科長 平本 隆 教授】
「プラモデルではもの足りない」。高校生のときは、気の合う友人と模型店に入り浸っていた平本隆教授。
中でも飛行機に強い憧れを持ったことから、工学部へ進学し、実際の機体を設計する仕事に就いた。
大学で教える学生には、「ものづくり」の現場で必要な力を伝えていきたいと考えている。
「自分の空」をたくさんの中から選ぶ
誰にもきっと、空への憧れがある。空を飛んでみたい、と思う。それは、なぜなのだろう。
平本教授が「空を飛ぶ飛行機を作りたい」と改めて思ったのは、学生時代に観た映画がきっかけだった。
広い草原の向こう側から飛行機が上がってきて、自由に飛び回る。
「地上を走る車ができるのは、二次元空間での移動。地面を離れた瞬間、三次元空間を動けるようになる」。
その解き放たれたような軽やかな飛行機の姿に、心惹かれた。
帝京大学宇都宮キャンパスにある航空宇宙工学科には、
平本教授のように飛行機が好き、空が好き、宇宙が好き、という学生が集まってくる。
もともと「航空学」は「空を飛ぶこと」に関する総合的な学問だ。
だから、「空が好き」な人が、空に関するさまざまなことを学ぶ機会を持てるように、
最も興味を持てる分野をたくさんの中から選べるような体制を整えてある。
航空宇宙工学科で扱っているテーマは、材料から航空機、ロケット、人工衛星まで。
「地面ギリギリから宇宙空間まで選べて、航空宇宙をやりたい人に広く対応できます」。
そのときの「最高」を作り上げる「設計力」
平本教授は、企業で設計の仕事をしていた頃、
機体を製造する部署の人や機体を使う側の人と接する中で「自分は、空を飛ぶものを『設計すること』にとても興味を持っていたけれど、
それを実際に作って、それが人に使われないと意味がない」のだと気づいた。
企業では、費用や期間などいくつかの条件があって、その中で最もよいものを作らなければならない。
「そういった場面で、ものごとをどのようにまとめるかを考え、最後までやり切る力が『設計力』です」。
「航空宇宙工学実験」という授業では、学生が約8人ずつの8グループに分かれ、
「手投げグライダーを自由に設計、作製せよ」という課題に挑む。
設計図と計画書の段階で若手の先生による事細かなレビューをクリアし、自分たちでコストを計算し、資材の発注も行う。
これを何回か行い、何を使ってどう作るかをすべて自分たちで考えて進める機会をくり返し与える。
これが、企業のものづくりの現場を体験し、「設計力」を身につけることにつながるのだ。
これは、卒業後、企業で機体を作る仕事に就いても、研究の道に進んでも必要な力だろう。
空好きが集まる強み
「空、宇宙、何でもいいから、『航空宇宙』の分野に好きなものがある人にここへ来てほしい」と平本教授は言う。
「数学や物理が苦手な子でも、工学系の学部・学科に入ってくる。それは、やっぱり好きなものがあるから。
嫌いな科目を克服しないとその先自分のやりたいことができないと分かれば、勉強するようになります」。
では、好きなものがまだ定まらない子はどうすればいいのか。
「ここにはいろいろな専門の先生がいるから、空に関する何かに少しでも興味をもてるなら、好きなことを一緒に探せますよ」。
学科名に「航空宇宙」という言葉が入っていることから、
同じ工学系でも機械工学科などと比べて「空」や「宇宙」に興味のある学生が集まりやすい。
ここは、同じものが好きな仲間と、自分が活躍する空を探せる場所なのだ。
学科紹介:帝京大学 理工学部 航空宇宙工学科
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