環境制御型農業における育成培地の研究【新地高等学校】
東北の農業の再生を目指して
福島県は、かつて、米やモモなど多くの農作物が生産され、農業産出額が全国第7位を誇る日本有数の生産地でした。その日本の農業を支えてきた福島県が、いま、東日本大震災に伴う津波による塩害と原子力発電所の事故による放射能により、農産物の生産・出荷が厳しい状況に置かれています。もう一度、福島県に農業の活気を取り戻したい。そんな想いから、この研究が始まりました。自然環境の影響が及ばないところで、育成環境を人工的に制御しながら作物を生産する環境制御型農業は、被災地における農業の再生の一助になる可能性があります。なかでも、閉鎖型の施設内で植物の生育に必要な光、水、温度、養分等の育成条件を緻密に制御する植物工場は、季節に関係なく計画的に作物を生産することができます。さらに外部との環境接触がないため、農薬散布の必要はなく、生菌数も少ないという利点があります。植物工場を使ってより多くの品目を安定的に栽培することができれば、商品の高付加価値化につながるのではないか。今まさに植物工場の研究者たちが取り組んでいる課題に高校生たちが挑みます。
植物工場で根菜類の栽培に挑む
開発期の最中にある植物工場の課題の1つに、育てられる植物がレタスやバジルなどの葉菜類に限られていることがあります。養分が含まれた水溶液で植物を育てる水耕栽培を中心とするため、根菜類や果物が育ちにくく、品質を保つことが難しいのです。これまでの研究では、水耕栽培で根菜類を栽培した場合、不揃いな形になることが報告されています。そこで、本研究では、植物工場でより多くの品目を育てるために、根菜類の生育に適した培地の研究を行います。12月12日に実施した実験教室では、植物工場を使った本格的な研究を行う前段階として、光環境が植物に及ぼす影響と植物工場の仕組みについて学びました。赤色、青色、緑色のLEDが点灯する植物工場キットの中で根菜類のラディッシュを栽培し、光環境の違いによって生育がどのように変化するか、仮説を立てて実験を行いました。2月26日には、本物の植物工場が学校に導入され、育成培地の研究が始まりました。果たしてラディッシュは無事に生長するのでしょうか!?
実験教室の様子
植物工場キットの外観
植物工場キット栽培研究中(左上は緑、右上は青、下は赤色の光で植物を育てている様子)
気に なる研究成果は、3月17日のサイエンス ・キャッスル in TOKYOで発表します!