エネルギーと社会のプロジェクト(ES2project)活動報告
ES2プロジェクトとは
エネルギーと社会のプロジェクト(Energy Science &Society Project)とは、エネルギー問題に関して、「科学」だけでなく「社会」の視点もいれて考えられる高校生人材を育成する試みです。科学技術振興機構事業主幹の鳥井弘之さんの声かけで2013年に発足しました。 初年度は関東2校、福島1校の3校でチームをつくり、学校ごとにエネルギー問題についてテーマ設定を行い、専門家の先生方にアドバイスをもらいながら調査・研究をしました。今年度は3月17日のサイエンスキャッスルにて、成果発表会を行いました。
ES2プロジェクトの流れ
【ES2プロジェクト運営体制】
発起人 科学技術振興機構事業主幹 未来テクノ塾理事長 鳥井弘之
企画・運営 株式会社リバネス
事務局 財団法人未来工学研究所
【協力いただいた専門家】
財団法人日本エネルギー経済研究所 十市勉氏
電力中央研究所エネルギー技術研究所 佐藤幹夫氏
独立行政法人科学技術振興機構 今清水正巳氏
エネルギー・コンサルタント 小野章昌氏
【研究テーマ】
学校名 | 研究テーマ |
神奈川大学附属高等学校 | 再エネ社会を実現するための政治的手段は何か |
晃華学園中学高等学校 | エネルギープロジェクトver.2012「小島の自然エネルギー供給計画を立案する」 |
福島高等学校 | 自然エネルギーの利用について(風力と太陽光) |
プロジェクトの様子
キックオフワークショップ
今回のプロジェクトの特徴は、高校生達の研究を、サイエンスだけでなく、経済、政策決定の専門家の方がサポートしてくれることです。初めての試みだったため、今年は晃華学園中学高等学校、神奈川大学附属高等学校、福島高等学校の3校が参加しました。各学校、研究テーマを決定し、それに関連した専門家の方の講演会と、エネルギーについて学ぶ「風力発電ワークショップ」を実施しました。
鳥井先生によるES2プロジェクトへの想いを語っていただきました。
はじめに十市先生が「エネルギーと社会・暮らしを考える」をテーマに、
エネルギーの世界情勢や日本の現状についてお話いただきました。
12月8日
神奈川大学附属高等学校では、今清水先生から「電力供給源に係る6つのシナリオ」について、どのような科学的な根拠を使って専門家達はシナリオを考えたか分かりやすく説明していただきました。原発事故前後のエネルギーに関する考え方の変化を理解した上で、高校生が考えるエネルギー政策の調査を始めました。
12月12日
晃華学園中学高等学校では、佐藤先生から「様々な発電技術の効率を考える」をテーマに、各発電技術とメリットでメリットについて紹介いただきました。生徒達がこれから「架空の島でのエネルギー政策のテキスト」を考える上で必要な発電技術について科学的、社会的背景を学びました。
12月26日
福島高等学校では、小野先生から「再生可能エネルギーを使う事〜世界や福島の動向をふまえて〜」をテーマに、ドイツやイタリアの先行事例を紹介しながら、再生可能エネルギーの可能性と安定性やコストのリスクに関して学びました。再生可能エネルギーを導入する福島県としてどのような動きをするべきか、考えるきっかけになりました。
各3校で、科学的・社会的なエネルギーに関する知識を得た上で、実際にエネルギーを創りだす体験をしていただきました。今回は、風力発電をテーマに、試行錯誤をしながらペットボトルで羽根をつくり、高い電圧をつくりだす競争をしました。
3校事前討論会
2月10日
12月にプロジェクトをスタートしてから約2ヶ月。東京工業大学に3校があつまり、各学校の調査・研究の進捗報告と、今年度の発表会に向けた事前討論会を開催しました。前半に各学校が各々のプロジェクトに関する発表と、懸案事項の共有をしました。後半は3校の高校生達が混ざり合いワールドカフェを開催しました。「2030年、私たちの社会に向けて」をテーマに、高校生の役割、技術開発について、どうしても言ってほしい事を議論しました。付箋をフル活用して、高校生だからできるエネルギーに関するアクションを出し合いました。
各学校の発表 ワールドカフェの様子
政治経験者の方とのディスカッション
神奈川大学附属高等学校がエネルギー政策に関しまして、政治経験をされた方の意見や考えをぶつけたいとのことで、元衆議院議員の後藤先生とディスカッションの場を設定しました。どのように政治家が考え、政策をつくっているかが見えてきました。
サイエンスキャッスル(研究発表会&パネルディスカッション)
3月17日
株式会社リバネス主催の中高生向け研究発表会の「サイエンスキャッスル」にて、研究発表会をおこないました。そこで、3校が今までの成果を発表し、その後パネルディスカッションを行いました。約4ヶ月間の研究・調査ですが、科学と社会の両方の側面からエネルギー問題を考える難しさと、面白さを経験できたようです。今後の彼らの研究の継続と、発信を期待します。
神奈川大学附属高等学校の発表。「再エネ社会」とい言葉をつくり、エネルギーの地産地消を提案しました。しかし、その社会の実現のためには、コスト面や送電システムの構築など数多くの課題があることも紹介しました。また、政治家へもの申す!と、エネルギーについて議論する場をもっとつくるべき、夏の参議院選ではエネルギー政策を争点の一つにすべきだと提言しました。
晃華学園中学高等学校の発表。学校で活用している副読本「エネルギープロジェクト」の情報を最新にすべく、新たに後輩達が使える副読本を制作しました。架空の「みゆき島」のエネルギー政策を考えることを通じて、発電のベストミックスを考える教材を完成させました。晃華学園は「キャッスル賞ポスター発表賞」を獲得しました。
福島高等学校は、太陽発電についての新システムについて研究しました。定電圧直流電源を家庭に設けることで、安価に太陽パネルを活用できることができないか調査し、理論計算してみました。その結果、通常の20分の1ほどの価格で太陽パネルを導入できると試算されたため、それが実際に可能か、東京理科大学の先生に協力をもらいながら、今後進める予定です。
パネルディスカッションでは、今回のプロジェクトを通じて、高校生だからできることについて議論がもりあがりました。「親や一般の大人達はエネルギーについて知らない。高校生だからこそ自分で学んだ事を、大人達に発信していくべきだと思った」「今回のような、学んだ事を他の学校の仲間と共有する場がありつづけることが大切だ」「足の引っ張り合いではなく、建設的にエネルギーについて議論するべきだ」など鋭い意見がでました。
サイエンスキャッスル全体の報告:http://s-castle.com/about/tokyo2012.html