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2013.07.01 冊子『教育応援』コンテンツ

『教育応援VOL. 18』先生の研究魂で生徒の探究心を育む

武庫川女子大学附属中学校・高等学校 坂本 正孝 先生

「この学校の特徴は、先生が自分の興味を持ったテーマを生徒と一緒にやっていくこと」と語る坂本先生。これまでには、色素増感型太陽電池や、パソコンから金を取り出す3R、プラナリアが持つ記憶物質などのテーマを研究していたと言う。現在先生が興味を持ち進めている研究テーマのひとつは、紫外線と植物の関係だ。

紫外線を光合成に使っている!?

紫外線というと害のあるイメージが強いのではないだろうか。けれど、エネルギーレベルの高い紫外線を光合成に使わないはずがないと思い、そのような植物がないか探していた。調べていくと、暗闇で紫外線を当てると、当てないときより呼吸の量が少なくなる植物があることがわかった。その植物とは、サクラだ。
呼吸量が減る原因として、専門家なら紫外線による呼吸の阻害で済ませてしまうかもしれない。しかし、先生のグループはサクラが紫外線で光合成しているという仮説を立てた。サクラの持つクマリンという色素が紫外線を吸収することから、このクマリンが関係しているのではないかと研究を進めている。「門外漢ならではの目線から新しい発見があるかもしれない」と、生徒以上に先生の方がわくわくしている。

1つのテーマで3年間

毎年4 月の初めに、高校1 年生に向けて、2、3 年生が自分たちのグループの研究を紹介するプレゼンテーションをする。1 年生の1 学期中には、20個程のテーマの中から、ひとつを決め、1 人の生徒は基本的に3 年間同じテーマで研究をするのだ。どのグループも、週に2 回程度は放課後の時間を利用して集まり研究を進めている。3 年生になると、時間割の中から週に2 時間を充てて、1 人1 人が卒業論文をまとめ、2 月には卒業研究発表を行う。まさに、研究漬けの3 年間だ。先生は、グループを活性化するために、1 年に1 回程度のイベントをするようにしていると言う。「色素増感型太陽電池のときには、生徒も私も色素についてよく知らなかったので、大学の先生を訪問して色素の抽出の仕方などを1 日教えてもらいました」。

生徒と一緒に自分も研究する

「専門ど真ん中の研究は、先が見えていてあまり面白くない」と先生。大学時代は作物学を専門にオオムギの光周性を研究していた先生だが、紫外線については専門外だ。「詳しくないですが、前から興味があったんです。紫外線、おもしろいですね」。先生も生徒も同じ目線で勉強し、話し合いながら、試行錯誤で研究を進めている。「こんなものがあったと、私の知らないことを生徒が見つけてきてくれるんですよ」。先生自身の探究心が、生徒たちの探究心への火付け役となっているようだ。