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2013.12.01 冊子『教育応援』コンテンツ

【読物】未来の教育 未来予想図1 踏み出せ一歩心動かす体験を求めて〜南極からのメッセージ〜

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未来の教育 未来予想図1

踏み出せ一歩心動かす体験を求めて〜南極からのメッセージ〜

潤徳女子高等学校 小俣 紋 先生

2020年、社会にはますます情報があふれ、学校にもより高度なICT環境が備わっていると考えられます。わかりやすい授業の解説も、色鮮やかな模式図も、学校では再現が難しい実験動画も、インターネットで検索するだけで生徒達は簡単に手に入れることができます。その時、教員が生徒に伝えるべき内容とはいったい何でしょう?潤徳女子高校の小俣先生にお話を伺いました。

 

遠い土地、

TV画面の向こうから

TV画面の向こうから生徒の名前を呼び、質問を投げかける。生徒が答え、雑談で笑いが起こる。普段と変わらない授業の光景のようですが、生徒達はいつもより真剣でいきいきとしています。小俣先生がいるのは、日本から14000km離れた地にある南極昭和基地。授業のテーマは「南極に棲む生き物」です。先生は南極の極限環境で生きるダニなどの生き物について顕微鏡写真を用いながら紹介し、雪に覆われた世界でも逞しく生活する生き物の力強さを伝えました。「南極には何があるの?どんなところなの?」生徒達の頭の中は純粋な疑問や興味、知的好奇心でいっぱいのようです。「自分たちにとって身近な先生が南極の地に立ってリアルタイムで授業をしている」その現実が、授業を新鮮なものにし生徒を惹きつけていました。

南極授業への挑戦

小俣先生は「南極教員派遣プログラム」へ参加し、2012年11月から2013年3月まで第54次日本南極地域観測隊・夏隊に同行して、南極から衛星回線によるTV会議システムを利用した「南極授業」を生徒達に向けて行いました。 「海洋生態系の研究をしていた学生時代、北極には行った事があったので、今度は南極です。教員としても人としても他の人がやったことがない領域に挑戦したいんです」。抑えきれない知的好奇心に導かれて、先生ははるか遠く南極の地を目指しました。学校側の理解を得てプログラムにエントリーし、10数倍の倍率をくぐり抜けました。さらに、授業で使う顕微鏡の調達に困った小俣先生は企業へ協力を依頼しました。数社周り、その中の1社から微生物を観察するための顕微鏡を貸してもらえることになりました。不安も課題も山積みの状況でしたが、先生の積極的なアプローチと周囲のサポートがあって、ついに南極授業が現実のものとなったのです。自らのやりたいことを貫くために行動し、努力と熱意をもってやり遂げた先生の姿は、南極の風景とともに生徒達の心に強く残ったようでした。

自らの体験を元に、「感動」を伝える

「教科書をなぞるだけではわからない『感動』を伝えたい。そのためにも自分の経験や体験を増やすことを大切にしています」。より特色のある授業を実施するためには、先生達がどんどん外へ出て、新しいことを学ぶことのできる環境の整備が必要になると先生は考えます。 「南極で知り合った人たちをつないで授業やワークショップを作ってみたいですね」。学校を飛び出して得た新しい体験が、これからの小俣先生の授業の土台、教育理念の基盤となります。未来の教育現場では、豊富な経験と感動体験をもった先生「自身」が優れた教材としての役割を発揮できるのかもしれません。