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乳酸菌は 「酸っぱい味」を 作るだけじゃない! ~カルピス社の乳酸菌研究最先端~

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研究者インタビュー 教科書の向こうにいる人

乳酸菌は 「酸っぱい味」を 作るだけじゃない! ~カルピス社の乳酸菌研究最先端~

取材協力 カルピス株式会社 発酵応用研究所

水野征一さん

「食べ物は、生き物。生き物が生きるために行った様々な働きを、私たちは受け取っている」そのことを改めて考え、「カルピス」を作り出す乳酸菌について研究しているのが、カルピス社の発酵応用研究所です。「乳酸菌によって甘ずっぱい「カルピス」ができる」その向こう側にはまだまだ知らない世界が広がっているのです。

 

牛乳の中で生きる、乳酸菌

「カルピス」を作る乳酸菌は「ラクトバチルス・ヘルベティカス」という種類で乳の中の環境をとても好む菌です。私たち生き物が生きていくためには食べ物からエネルギーを得ることが必要です。乳酸菌も乳の中にある乳糖などの糖を使ってエネルギーを得ていますが、その過程で生成されるのが乳酸です。乳酸菌というと、ヨーグルトや「カルピス」などの酸っぱい味を作る微生物として有名なので「乳酸菌は乳酸を作るもの」という以上のことを考えたことがある方は少ないかもしれません。しかし、それだけでは乳酸菌は生きていけません。たとえば、生き物が生きていくためにはアミノ酸が必要です。乳の中にはタンパク質はたくさん含まれていますが、アミノ酸はあまり多く含まれていません。タンパク質は約20種類のアミノ酸が鎖状に数百~数千個つながった分子で、アミノ酸の並び順によって、立体的な形に折りたたまれたものです。乳の中の乳酸菌はこのタンパク質を消化酵素で分解する能力を持っており、アミノ酸や、アミノ酸が数個~数十個つながったペプチドと呼ばれる分子にまで分解して、体内に取り込んでいます。この過程で生成されたアミノ酸やペプチドの一部は乳の中にそのまま残ります。これがチーズや「カルピス」の風味を作り出す要因の一つになっているのです。乳酸菌が乳の中に残してくれているものは何なのか。それを解明し、人に活かそうと研究しているのがカルピス社の研究者たちなのです。

「カルピス」の発酵乳から見つかった、短いアミノ酸の鎖

乳酸菌と体の関わりを最初に調べたのは、パスツール研究所のメチニコフ博士という研究者です。博士は「ブルガリア地方で長寿の人が多い」ことに興味を持ち、その理由を調べました。その結果、ブルガリア地方ではヨーグルトを多く食べており、ヨーグルトに含まれる乳酸菌がおなかの中の悪玉菌を減らしてくれることが原因だと考えた博士は、ヨーグルトを食べることで長生きが実現する「不老長寿説」を唱えました。この考えをもとに、カルピス社の研究所では、「カルピス」を作る乳酸菌で発酵した乳(「カルピス酸乳」)が寿命に与える影響について研究を行いました。その結果、ネズミに「カルピス酸乳」を摂取させると、摂取しない場合と比べて寿命が延びることを発見しました。そこで、いったい何がネズミの寿命に影響を与えたのかを調べるため、様々な研究を行い、「カルピス酸乳」が高くなった血圧を下げることを発見しました。研究員たちは「カルピス酸乳」の中から血圧を下げる成分を見つけるため、遠心分離やクロマトグラフィーなどを用いて成分を分離し、そして見つけたのが、バリン-プロリン-プロリン(VPP)とイソロイシン-プロリン-プロリン(IPP)という3つのアミノ酸がつながった2種類のペプチドでした。カルピス社はこの2つのペプチドを総称して「ラクトトリペプチド(LTP)」と名づけました。血圧が下がる仕組みは様々な要因がありますが、「LTP 」は血圧の制御に関わる酵素を活性化するために働くアンジオテンシン変換酵素という物質を阻害することで血圧を調整していることがわかっています。さらに最近の研究では、「LTP」の新たな働きとして、血管の機能を改善させ血管を柔軟でしなやかに保つ作用があることが明らかとなり、動脈硬化などの循環器病の予防にも有効である可能性が示唆されています。「ラクトバチルス・ヘルベティカス」はタンパク質分解酵素の働きが強く、短いペプチドも多く作ることができます。一方で、アミノ酸の1つであるプロリンはその特殊な構造から、タンパク質分解酵素が働きにくく、プロリンを含むペプチドは、乳酸菌が利用せずに乳の中に残ったままになることが多いことが分かってきました。「LTP」が「カルピス酸乳」に含まれていたのもこのような理由からではと考えられています。

身近な食の疑問を研究で解明する

「乳だけでは発揮できなかったいろいろな機能が、乳酸菌の力を借りることで発揮できることがわかってきている。その仕組みを少しでも解明してお客様に届ける。それが私たちの仕事」と研究所の水野さんは話します。「LTP」以外にも、「カルピス酸乳」の中に記憶力を高める効果があるペプチドが含まれるということもネズミでの実験から明らかになってきました。さらに、研究所では1つ1つのペプチドの働きだけでなく、「なぜおいしいの?」「なぜホッとするの?」など、「カルピス」を飲んだ人たちからの感想を科学的に解明できないか挑戦しています。この研究により、発酵乳の「香り」のリラックス効果や、嗜好性を決める要因などが少しずつ明らかになってきています。古くから食べられてきた発酵食品と体との関わりはまだまだ分からないことがたくさんあります。それが今、最先端の研究によって少しずつ解明されているのです。

 

乳酸菌と発酵に関する情報誌「Kin’s」プレゼント

カルピス社の最新の研究成果をわかりやすくまとめた冊子「Kin’s」の最新号(Vol.14)を同封しました。乳酸菌をはじめとした微生物を題材に最先端の研究について学ぶことができます。キャリア教育や社会と理科とのつながりを伝える教材としてぜひご活用ください。

9月中旬発行予定の次号(Vol.15)の送付もご希望される場合は、先着1,000名様にお届けしますので、「教育応援vol.23」に同封されている申込用紙(全国中学校・高校へ冊子を1冊ずつ無料配布しております)に必要事項をご記入のうえ、FAXでお申込みください。(申込締切:9月30日(火))

キンズ14号表紙

「カルピス」を使って研究してみよう!

最近、「カルピス」のもととなる発酵乳の「香り」にはリラックス効果があることがネズミを用いた研究でわかってきました。「カルピス」の「香り」でも同じように人で効果があるのでしょうか?学校や家で研究してみよう!

<リラックス効果をどうやって調べるの?>

リラックスしている時と、ストレスを感じている時、それぞれで「カルピス」の「香り」をかいだ時とそうでない時の気持ちと体の変化を調べます。(カルピス社の研究・開発について詳しくはHPをご覧ください。 http://www.calpis.co.jp/laboratory/

 

 

 

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