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【先端科学教育やっています】研究経験を活かした教師としての実践 〜課題研究の発見を学術論文に〜<京都府立桃山高等学校>(vol.23)

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<先端科学教育やっています>

研究経験を活かした教師としての実践

〜課題研究の発見を学術論文に〜 

京都桃山

京都府立桃山高等学校

加藤 正宏 先生

2013年京都府立桃山高等学校の生徒が研究した内容をまとめた論文が日本化学会欧文誌Bulletin of the Chemical Society of Japanに掲載され、優秀論文賞を獲得した。古くから謎に包まれる「グリセリンの不凍性」。この謎を明らかにした生徒達を指導した加藤先生に、高校における研究のあり方についてお話を伺った。

発見が生徒を研究者に変えた

 グリセリンは、凝固点が18℃だがそれ以下でも結晶化せず安定的なため、細胞を凍結する際の保護剤としても使われている。課題研究テーマを決める時期に、凍らないグリセリンの不思議を生徒に紹介したところ、数人が取り組む課題として手を挙げた。「何℃まで冷やせば凍るのか」生徒達と調べたが、いくら低温にしても結晶化は起こらなかった。2 ヶ月たったある日「諦めて帰ろか」と、溶液と実験器具を放置して理科室を出た。すると翌朝、グリセリンが結晶化していたのだ。この後、再実験を繰り返し、「-75℃で1時間冷やした後、10℃程度にゆっくりと戻す」という方法で結晶化できることを導いた。

この発見は、従来法より簡易な方法として注目を集めた。「当初、生徒らは研究の成果を実感していないようでしたが、反響を知り、だんだん研究を自分事として捉えるようになりました」。発表練習を何度も繰り返し、研究の方針にもアイデアを持ち寄るようになるなど、短い時間で研究者としての成長を感じたという。

生徒が発見した「価値」を最大化する

 研究チームの次の疑問は「なぜ凝固点で凍らないのか」だった。文献には「グリセリンの結晶は水素結合が多く、構造が安定で状態変化しにくい」とあった。しかし、実際に結晶のX線構造解析をした例は少なく、あっても水素結合までは確認できていなかった。大学院での研究経験をもつ先生は、「新規性が高いなら学術論文にするべき。生徒の発見ならなおさらだ」と感じた。その後、地域の大学と連携し、2年かけて結晶化グリセリンのX線構造解析を行った。そして、世界で初めて結晶中に水素結合ネットワークがあることを明らかにし、論文発表に至ったのだ。

新規性にこだわらず、研究を楽しむ姿勢を伝える

「今回は論文掲載となりましたが、教育現場で新規性や成果を求めすぎることは生徒の純粋な好奇心を潰してしまう可能性もあります」。大事な事は、身近な体験の中から「なんでだろう」と思うことを見つけ「研究をエンジョイする」ことだと先生は話します「再現実験でも真剣に行えば、研究手法を知り、論理的に考える訓練になります。授業では教師として研究手法を伝えることを重要視し、クラブ活動では研究者として新規性を追求します」。次は、アスピリンの合成や、バナナの黒点に潜む謎に挑戦しているという。生徒と一緒に研究を楽しむ桃山高校の次の発表が楽しみだ。

京都桃山_賞

サイエンスキャッスル2012での受賞の様子

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