【実施報告】141108京都朝鮮中高級学校「色変わりしたアサガオの秘密に迫れ!」DNA鑑定実験教室
実施日時 2014年11月8日(土)14:00〜17:30
学校 京都朝鮮中高級学校
対象 中学3〜高校3年生計16人
テーマ「色変わりしたアサガオの秘密に迫れ!」
内容 PCRを使ったDNA鑑定実験
京都朝鮮中高級学校にて実験教室を行ってきました。
当初は14人の参加でしたが、開始直前に、2人の女子生徒(中学3年生)から急遽参加の申し出があり、参加者は全部で16名となりました。
生徒達ははじめすこし緊張していたようでしたが、男女・学年を混ぜて着席してもらい授業はスタートしました。
初めにカン先生より今日の授業についての説明をしていただきました。今回の教室は京都府青商会の方々のおかげで開催できた旨が伝えられました。
今回の講師はこの学校そ卒業生であり現在京都大学大学院でイネのトランスポゾンを研究する琴梨世(クムリセ)。
今回の実験教室の企画を7月から考え何度も母校へ足を運び、青商会に働きかけ実施へとたどり着きました。
彼女をそうさせた思いは一つ「後輩達に「挑戦」することのおもしろさを伝え、自信をもってもらいたい」からでした。
「後輩達に「挑戦」することのおもしろさを伝え、自信をもってもらう」
この事を今回の実験教室の目的に据え、メンバー達による企画づくりが開始しました。
途中、研究活動と企画の両立に苦労しながら、
「本当にこの教室を通して後輩達に伝えたいことは?」
「研究って何がたのしいの?」
「あなたが一番挑戦したことって何?」
「それじゃあ、伝わらないよ」
メンバー達と連日連夜のディスカッションが続きました。
この教室はクムにとっても、自分について、研究についてふりかえるためのトレーニングなのです。
========
「自分がつくってきたもの後輩達に受け入れられるのだろうか」
緊張の中、講義が始まりました。
生徒に質問を投げかけても初め反応は薄く、若干答えるのを恥ずかしそうにしている印象を受けました。
しかし、話が進むにつれ、クムも生徒達も緊張がほぐれていくのがわかりました。
今回の実験の題材は1つの花びらが白と紫の半々になってしまっているアサガオです。
自然界では、遺伝子の突然変異によりこのような変異が起こる場合があります。
生き物の性質を決めるのはDNA、DNAの構造にせまろう!という流れで授業は続きます。
DNAについては多くの生徒が耳にしたことがあるようでしたが、実際にDNAを見た生徒についてはほとんどいません。
「これから扱うDNAだからこそ、性質を知るために一度取り出してみてみよう!
まずは「自分の口の中から細胞をとってDNAを抽出する実験」を行いました。
口の中をゆすいで吐き出す際にはちょっと恥ずかしそうにかくして作業する子もいましたが、
抽出を終えDNAを観察する際には、きちんと見えるかどうか必死になっていました。
生命の設計図がこの白い糸の中につまっていることに対して不思議そうに覗きこむ姿が印象的でした。
DNAについて理解したら、次は仮説を立てます。
「生物の設計図DNAによって生き物の性質が変わってしまうことをヒントに、なぜアサガオの花の色が変わってしまったのか各班で仮説を立ててみてください」
クムの問いかけに対して、少し、苦手そうに俯いていた生徒達でしたが、
各班のTAが「仮説に間違いはないから恐れず挑戦してみよう!」と積極的に声をかけていました。
その結果。紫の細胞と白の細胞がある、白いアサガオには細胞がたりない、白いアサガオに紫の何かが混ざった、などたくさんの仮説がでました。
その後、紫色の色素の合成遺伝子に起きた変化を確かめるため、
PCRという方法に挑戦しました。
PCRは、長いDNA配列のある一部分のみを大量に増幅させる方法です。
初めて使うピペットと、PCRに戸惑いながらも、すぐにコツをつかむ生徒達。
「新しい事へ挑戦することを恐れない」すこしずつこの実験教室の狙いが子どもたちに浸透してきたようでした。
今回使ったPCRは「Makers toy PCR」リバネスが開発した手作りのPCR増幅装置を使いました。→開発秘話はこちらから
はじめて聞くPCRの話は専門的で難しそうにしていましたが、休憩後にPCRを体感できるゲームを行い、生徒達に理解を助けていました。
無事にPCRは終了し、いよいよ電気泳動で結果をみます。
細かいウェルに慎重にDNA増幅産物をアプライし、セット完了。
電気泳動を待っている間に結果について予想を立てたが、生徒達がはじめに立てた仮説を振り返り、どのような結果がでれば、自分たちの仮説が検証できるのか、真剣に考えているようでした。
電気泳動終了後に実際に青色LEDを用いてバンドの移動の様子を見ました。
結果は、無事DNAの増幅が見られ、その結果をもとに白のアサガオに起こった遺伝子変異についてのディスカッションが盛り上がりました。
最後にクムから、「新しいことに挑戦すると、新しい世界が見える。挑戦を恐れずに、自信をもって進んでください。そして見えた世界の面白さを他に人にも伝えられる人になってください。」というメッセージが送られました。
生徒達の真剣な眼差しがクムに注がれていました。
教室を出ていくころには笑顔で「ありがとうございました」と言ってくれた生徒達。
授業の前後で見えている世界が変わってきたようでした。
リバネスが行う実験教室は、先端的な科学について「教える」ものではありません。
科学を面白いと思うその「感動した思い」、「メッセージ」を「伝え」にいくのです。
人を動かすのは、「熱」です。
今回の教室もクムをはじめとする学校、青商会のみなさまの「熱」が伝わり、子どもたちの心に「新しい化学反応」を起こしたものと感じています。
これからも「科学を伝える」ことで、新しい価値を生み出し、少しづつ世界を変化させる活動を行って行きます。
みなさん、ありがとうございました!
(インターン佐々木ありな 一部修正、加筆)