【国際教育はじめませんか?】カナダでの実験教室に挑戦 ~『学ぶ英語』から『使う英語』の世界へ~
相模女子大学中学部英語科主任 国際交流・海外研修担当
山村 千代 先生
相模女子大学中学部・高等部では、希望者を対象に継続的に実施しているカナダ・マニトバでの海外研修プログラムの中 で、理科を英語で学習する「イマージョン教育」に取り組んでいる。この海外研修を通して、普段学んでいる英語を実際 に使うことで、学校で学ぶ英語が生きたコミュニケーションのツールであることを意識するきっかけを作り出している。こ の海外研修を企画・引率した山村先生にお話を伺った。
文化交流の一歩先へ
今回の海外研修プログラムで力を入れたのは、英語を語学として学ぶのではなく、ツールとして使用する実感を持てるような体験を作ることだった。そこで、相模女子大学の姉妹校であるマニトバ大学に相談したところ、大学が行っている高校生向けの科学実験プログラムを実施してもらえることになったのだ。「現地の子どもたちとの文化交流も重要ですが、科学の実験を取り入れることで『2つのわからない』を経験させ、問題解決の成功体験をさせたかった」と先生は話す。現地の大学を舞台に、慣れないながらもこれまでに学んできた英語を「使って」、まだ知らない科学の現象を学ぶことで、生きた英語を身につけることを狙った。
現地での活動を自分事に
先生らは、約3週間の海外研修を通じて、生徒たちが達成感と自信をつけられるよう、「海外生活の基礎体力作り」の事前研修を用意した。実験の内容や方法は当日まで生徒には伝えず、「わかった!」「できた!」という実感を沸かせるにはどうしたらいいかを考えた。そこで、海外での研究経験を持つ理系の研究者を学校に招き、酸性・アルカリ性やビーカー・ピペットなどの専門用語や単位、量の変化の表し方などの科学実験でよく出てくる言い回しを教えてもらった。また、いつ出てくるかわからない英単語を聞いて、すぐに理解できるようになるために、ゲーム的要素を取り入れた練習を行った。数人の班に分かれて、英語の発音を聞いて、道具や単位が書かれているカードを取るという簡単な、かるたゲーム形式で「聞く」練習を重ねた。
学んだ英語を「使う」ことで見えてくる世界がある
当日、現地の大学で用意されていたのはゲル化の原理を学ぶスライムづくりや、水の力で物を動かす実験だった。生徒たちにとっては初めて学ぶ科学の知識だったが、実験には事前研修で学んだ英語がしっかりと使われていた。生徒からは、事前に学んだ「その手順をもう一度説明してもらえますか?」などの質問が積極的に飛び交い、自主的にプログラムに参加することができていた。「実験内容も英語も不慣れで不安だったはずですが、単語がわかるということが自信になっていたようです。学んだ英語を実際に使って科学の実験ができていることが楽しくて仕方がないようでした」と先生は当日の様子を振り返る。今回の活動を通じて「英語を使って新しいことを学ぶ楽しさ」を生徒に感じてもらうことができた。「これらの経験をもとに、生徒にはいろいろなことにチャレンジしてほしいと思います」。海外研修を企画するときには、是非その地域やそこにいる人にしか提供できないプログラムを実施し、「学ぶ」の次のステップである「使う」というアウトプットを実践してほしい。
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