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[最終回]1枚の図面は、ものづくりのすべてを示す道しるべ

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浮体が転覆しないよう,傾いた浮体を正常な位置に戻すように働く「復元力」を徹底的に計算しながら,どんな構造にするか議論しました。

~設計図を通じて海に挑む、若きエンジニア〜

 「これが完成したらいろいろな人が喜ぶんだ,みんなの役に立つんだ,と思えるようなものを設計したい」と話すのは,新日鉄住金エンジニアリング株式会社の笹井綾乃さん。入社からのおよそ4年間で,さまざまな海洋鋼構造物の設計に携わってきましたが,それでも「技術者としての一人前」にはまだ届かないといいます。

設計は無駄いを減らす武器でもある

新日鉄住金エンジニアリング(株)の笹井綾乃さん。作業服を来て現場に出ることも。
新日鉄住金エンジニアリング(株)の笹井綾乃さん。作業服を来て現場に出ることも。

ものづくりでは,たとえば「これくらいの力に耐えられるものを」といった条件が必ずあり,それを満たすような構造と部材を最初に決めます。次に,それが本当に条件を満たしているのか,計算や解析で確かめたり修正したり。それから,図面に起こすのです。そして,設計が終わったら次は試作……と思ったら,「試作はしません」と笹井さん。実験は,わからないことを確かめるために行います。しかし,ものづくりでは,「実際につくる段階に入る前に,条件を必ず満たしていることがわかっていないといけないのです」。試作が必要になる場合,それは「設計した」といえません。そのためには,設計の段階で,理論的に条件を満たしていることを証明することが大事なのです。

大きなものも,人の手でつくられている

笹井さんが,初めて設計の難しさを感じたのは,を沖に運ぶ船の上に,桟橋をめておくためのストッパーを設計したときでした。船が荒波で揺れると,ストッパーにかかる力も大きくなります。それに耐えられるストッパーを設計するのが笹井さんの仕事でした。しかし,考えることは強度だけではありません。ストッパーは,人の手によって溶接することでしか取り付けることができないのです。溶接量を増やせば大きな力にも耐えられるようになりますが,作業時間が長くなり,人手もお金もかかってしまいます。実際にそのストッパーを見に行ったとき,その製作をしている方から「溶接が多くて大変だよ」と言われ,「もっと工夫ができたのかもしれない」と,悔しい思いもしました。人の手でつくられるからこそ,設計で気をつけないといけないことがたくさんあるのです。

実力で勝負,エンジニアとして成長したい

笹井さんのデスク。何枚もの設計図がここでつくられてきた。
笹井さんのデスク。何枚もの設計図がここでつくられてきた。

設計というと,CADで図を描いたり,専用のソフトで解析をしたり,デジタルなイメージをもっている人も多いでしょう。笹井さんも最初はそんな考えをもっていましたが,「解析するだけでは技術は身につきません。頭で考え,手を動かすことで習得していくものなんだと知りました」。そんなふうに「泥くさい」努力を続けていくことで技術を磨いていくのです。エンジニアの仕事の魅力のひとつは,役職に関係なく実力で勝負できること。なぜその構造にしたのか,その計算の根拠は何か—きちんと説明してみんなに理解してもらうことができれば,新人の意見だって採用されることがあるのです。上司や先輩たちの活発な議論に,いつか自分も加わって,自信をもって意見を言えるようになりたい。それが,今の笹井さんの目標です。 (文・磯貝 里子)

Presented by 新日鉄住金エンジニアリング株式会社

【教員研修 @6/25東京 @7/10北九州】情熱・先端Mission-Eプロジェクトの教員向けプログラム説明・体験会 参加者募集

プロのエンジニアも 未来の洋上風力発電所を設計中!

〜新日鉄住金エンジニアリング北九州チーム〜

浮体が転覆しないよう,傾いた浮体を正常な位置に戻すように働く「復元力」を徹底的に計算しながら,どんな構造にするか議論しました。
浮体が転覆しないよう,傾いた浮体を正常な位置に戻すように働く「復元力」を徹底的に計算しながら,どんな構造にするか議論しました。

情熱・先端Mission-E「エネルギーアイランドプロジェクト」には,4校の参加校とリバネスチームの他,新日鉄住金エンジニアリング若手技術者も参加しています。プロのエンジニアたちは,今回のmissionにどのように取り組んでいるのでしょう。コメントをいただきました!

「私たち新日鉄住金エンジニアリング若手技術者チームは,社内の各部門から集まった5名のエンジニアで結成され,Mission-Eに取り組んでいます。今回の課題には,設計・コスト試算・実験検証・プレゼンテーションなど,私たちの日常の仕事内容がたくさん盛り込まれています。決められた条件の中でいかに性能のよい設備をつくれるのか,答えがひとつではない課題に仲間と一緒に取り組むエンジニアリングのおもしろさも体感できると思います。僕たちも高校生のみなさんに負けないようがんばります!」

会社の敷地内に設置したプールで実験中。
会社の敷地内に設置したプールで実験中。