新着情報

2016.06.17 冊子『someone』コンテンツ

メロディが脳の感情に関わる部分に働く 白松(磯口) 知世

頭の中にピアノの鍵盤を思い浮かべてみましょう。まずドの鍵盤だけ叩くと,ごく単純な音が鳴りますね。このとき耳の鼓膜から入った音の信号は,主に脳の聴覚系だけで処理されます。次に,高さの違う音をいくつか弾いてみると,音の組合せによっては,長調の明るいメロディや,短調の暗いメロディとして聞こえてきます。ごく単純な音ではなく,それが長調や短調の曲になったとたん,じつは脳の中では受け止め方が変わります。聴覚系に加えて,ヒトの喜びや悲しみといった感情に関わる脳の場所も,同時に働くようになるのです。さらに,長調の場合は,ごほうびをもらったときなどのうれしい感情に関わる「線条体」が,短調の場合は,悲しみや怒りなどの感情に関わる「扁桃体」という脳の部分が活動します。

このように長調や短調の曲を聞くことで,感情に関わる脳が働くのは,人間だけの特権なのでしょうか。もう少し原始的な哺乳類,ラットに長調の和音と短調の和音を聞かせてみました。すると,ラットの脳でも,感情に関わる部分が同時に働いている可能性が見えてきたのです。音楽を習っていないラットが,長調や短調の曲を聞いて喜びや悲しみを感じているかは定かではありませんが,長調や短調というものを認識する能力は,人間だけでなく,他の哺乳類ももしかしたら持ち合わせているのかもしれません。

白松(磯口) 知世先生ホームページ

取材協力:東京大学 先端科学技術研究センター 白松 知世 さん

取材協力:東京大学 先端科学技術研究センター 白松 知世 さん