サイエンス冊子someoneとは

科学の情報は「触れる」だけでなく「自らかみ砕く」こと

潤徳女子高等学校は創立87周年を迎える女子高校である。理系選択者はあまり多くはないが、全校生徒が日常的に理科に触れられる環境づくりを目指し、授業では多くの実験を取り入れている。積極的に科学雑誌や新聞、書籍を活用する木村美和子先生、小俣紋先生にお話を伺った。

継続的に科学に触れる習慣づくり

同校は、文系を選択する子がほとんどで、理系に対する苦手意識を持っている生徒も少なくない。そこで、理科の授業では木村先生と小俣先生は定期的、継続的に科学に触れる環境をつくろうと、自分が選んだ科学の本を指定図書というかたちで生徒に読ませたり、高校生向け科学雑誌や新聞など、最新の科学ニュースを読むことを勧めたりと科学に触れる工夫をしている。さらに、年3回の長期休みには「科学雑誌を読んで自分の興味あるサイエンスについてテーマを立てて調べてきなさい」というレポート課題を出し、記事を読んで考えたことを400字詰めのレポート用紙に書いてもらっている。はじめは読み方も分からず興味を持てない子も多いが、継続的に2年間触れ続けると、「あ、最新号だ!」といって抵抗なくパラパラと記事が読めるようになってきた。

興味をもつことで「他人事」から「自分事」へ

新聞の中から科学に関する記事を見つけることも上手くなってきた。ある国での環境汚染がほかの国にも影響を及ぼすというニュースを調べていた生徒が、「隣の国の環境汚染が日本にも影響することがあるのかもしれない」という感想をもらしたことがあった。遠い国の情報が「自分事」になって考えられるようになった証拠だ。「文系選択、理系選択に関わらず、身近なところにあふれる科学を無視しては生きてはいけないですから、もっと科学に興味を持ってほしい」「最先端の科学ではなくても、石鹸を買ったら何でできているのかと表示を見たり、食品の添加物に興味を持ったり、そんな子になってほしい」というのが木村先生と小俣先生の思いだ。

「理科」という教科で育つ力

興味をもったその先にも、課題はある。科学に興味を持ち、情報を得ても「へ〜そうなんだ、すごいな」で終わってしまうことも少なくない。レポート課題でも、「考えたことを書きなさい」という課題だと内容を写して 提出してしまう場合もある。そこで、 レポート課題を出すときに、「この記 事で注目すべき点がどこなのか、どうやって感じたことを書き表せばいいか、どうやって自分の考えを引き出していけばいいか」を書いたプリントを一緒に配ることもある。レポート課題だけでなく、科学は、実験でも必ず「なぜこうなったか」と考察するようなプロセスがある。○○になったからこうかな、○○が原因かもしれない、と何通りもの考え方ができるのは科学ならではの思考だ。「興味をもったその先に、情報をかみ砕いて、どこがおもしろい点なのか考え、自分の意見を言える人になってほしい。」これは理科の授業にとどまらず、将来社会で活躍するためにも必要な力になるだろう。