SBN181_分子生物学からエネルギー問題解決! DNAは宝の山!?
ふと気がつけばもう11月。あっという間に寒い冬が始まります。冬は家庭のエネルギー消費が最も大きくなる時期です。今回は、そんな冬に向けて、エネルギーについての研究を紹介します。これからのエネルギー源の1つとして考えられているバイオエタノール生産への貢献が期待される研究結果がDNAを扱う世界から発表されました。
植物などを原料とするバイオエタノールは、化石燃料と異なり、燃やしても植物が固定した炭素が
二酸化炭素として放出されるため、大気中の二酸化炭素量は増加しないクリーンなエネルギー源という特徴があります。特に最近では、私達が食べない葉や茎の細胞壁を原料としたバイオエタノールが注目されています。ただ、細胞壁からエタノールを作るには、非常にコストがかかってしまうのが課題でした。細胞壁を構成するのは、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどです。この中でセルロースが主にバイオエタノールの原料として使われます。しかし、ヘミセルロースやリグニンなどが、がっちりくっついているため分解してセルロースを使うのが大変だったのです。
今回、筑波大学の住吉さんらは、この細胞壁の構造を変化させたイネを作り出しました。そのイネは、厄介なヘミセルロースの量が約20%減るだけでなく、セルロース自体の量が約30%も増えていました。さらに、私達が食べる種子の部分には変化はなく、米を獲ることも可能でした。この一粒で三度美味しいイネは、1つの遺伝子の制御によって作られました。住吉さんらは、もともとイネの中にあったヘミセルロースの分解酵素OsARAFに注目し、その酵素をイネ中で過剰に作らせました。OsARAFが過剰にあるイネでは、ヘミセルロースが分解され減少する一方、その減少を補うためにセルロースが増えたと考えられています。この研究は効率の良いバイオエタノール製造を可能にするかもしれません。
今回の研究ではDNA研究がエネルギー生産につながる可能性が見えてきました。私達の身の回りにはまだまだ様々な問題があります。解決のヒントの1つは私達生物のDNAの中にもあるのかもしれませんね。
参考:http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/sites/13/201311050500ine.pdf
記者コメント:
この研究成果を発表した住吉さんは、リバネスのインターンに参加していました。『someone』の編集者もしていたんですよ。(吉田拓実)
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