新着情報

2014.01.17 サイエンスブリッジニュース

SBN186_地球温暖化の解決に貢献?!

186「ふああ~」。授業中なんだか眠くて思わずあくび。頭がぼんやりしてしまうのは、教室の二酸化炭素濃度が上がり、脳の働きが低下しているからかもしれません。今回はこの「二酸化炭素」がテーマです。

炭素循環」を学んだでしょうか。先程のあくびで吐き出した二酸化炭素(CO2)は、大気に拡散し、やがて植物の光合成に使われます。その植物を食べて私たちは生きています。炭素(C)に注目すると、

人→大気→植物→人というように循環しています。

また、一部の二酸化炭素は海な川などに溶け、また大気に戻り、ゆっくりと地球を旅していくのです。

地球上で炭素を最も多く貯めているのは炭酸塩という岩石群です。これまで、岩石が風化して、中の炭素がまた循環の流れに戻るのは数百万年の時間がかかると考えられていました。 しかし、ある種類の鉱物は驚くべき速さで炭素の入れ替えを行っていることが、物質・材料研究機構の石原さんらの研究で明らかにされたのです。

その鉱物の名前は「ハイドロタルサイト」。粘土鉱物で、鱗が重なったような層構造をし、この層の間に陰イオンを取り込む性質を持っています。石原さんらは13C同位体を持つ炭酸イオン(CO32−)を含むハイドロタルサイトを人工的に作り、空気中に置きました。炭素がどうなるかを調べていくと、約1週間後、鉱物に含まれる13C同位体はほとんどなくなり、代わりに大気中に含まれる二酸化炭素が持つ「12C」になっていることが分かったのです。まるで呼吸をしているかのように中の炭酸イオンを吐き出し、大気中の二酸化炭素を取り込んでいたのです。乾燥した空気ではなんと、2~3日で入れ替えが完了しました。なぜ炭素の入れ替えが速いのか、詳しい仕組みはまだ解明されていません。構造をさらに詳しく研究することで、人工的に二酸化炭素を取り込む能力を上げることができれば、地球温暖化の原因の1つと言われる二酸化炭素を回収する技術の開発にもつながるかもしれません。

さて、ここまで読んでくれてありがとうございます。疲れたら大きく息を吸い込んで深呼吸。・・こんな風に、地球のどこかで石たちも呼吸をしているんでしょうか。

参考:http://www.nims.go.jp/news/press/2013/12/hdfqf1000001pch1-att/p201312040.pdf

記者のコメント:ハイドロタルサイトは水の浄化などにも使われる研究が進められているようです。比較的安く、人工的に作れるので工場等への利用が期待できますね。(楠)

「教育応援先生」に登録いただいた先生には、最新のサイエンスブリッジニュースを毎週火曜日に、学校で使いやすい壁新聞形式に編集したものを配信しています。詳細はこちらまで ⇒ サイエンスブリッジニュース for school